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ポジティブなコミュニティの成立条件 | ETIC主催のTokyo Startup Gateway 2015 キックオフ会が面白かった。

ETIC主催のTokyo Startup Gateway 2015 キックオフ会に行ってきました。 参加する中で「ポジティブなコミュニティの成立条件」について想いを馳せたので、記します。

(今日の会場は恵比寿のイベントスペースでした) photo by robertpaulyoung

ETICというのは、起業家養成プログラムを、20年以上もやっている日本のスタートアップ(ベンチャー)育成の老舗。知り合いが何人か内外で関わっていることもあり、いつも定期的にETICのイベントに参加している。その度に自分の所属やポジションは変わっている。不思議。

今 自分が参加中の Tokyo Startup Gatewayは、このETICが培ってきたネットワークを総動員して東京都と組んで始めた新しい起業家養成プログラムとのこと。

http://tokyo-startup.jp/

今日はその書類選考を通った人が初顔合わせをするキックオフ会。応募は500件ほどあったということで、その中から一次書類選考を通過した約100人が会場に集った。

会場では、5、6人ごとにテーブルを囲んで座る(みんな初対面)。予め提出した事業計画に基づいて、似たようなトピックの方々で集まれるよう座席配置が組まれていた(事務局の皆様、ソートありがとうございます)。

競争ではなく、協力

最初にETIC事務局の石野さんからプログラムの概要紹介。 大事な説明だなと思ったのは、「隣に座っている人は、蹴落とす対象ではない。彼らは将来の取引先であり、顧客であり、同志である」という説明。起業家の卵はときに必要以上に秘密主義に走る。周りは皆ライバルだ!と感じてしまう。

そこで上述の説明。これは、安心感をもって自分のアイデアを露出して、フィードバックを積極的に求める雰囲気を醸成する上で極めて大事だと思う。この雰囲気がないと、ビジネスコンテストは冷たく、熱量が低く、疲弊するものになってしまう。

(安心感が大事)photo by paul goyette

特に自分が参加したチームのあたたかさ、フィードバック力はものすごく高かった。みんながお互いの意見を真摯に聞いて、「愛情をもって(これも石野さんの言葉)」互いにフィードバックをしていた。それを感じたのが、概要説明に続く一連のワークショップ・セッション。

最初にやったのは、隣の人とペアを組みインタビューを互いにし合うワークショップ。あらかじめ決められたインタビュー項目に基づいて25分ずつしゃべって、インタビューをする側がそれを聞き取る。インタビュー内容は、その人の過去、未来を語ってもらうもの。パッションがどこにあるのかを引き出す内容。

その次に、一時間かけて、グループで自己紹介+自分のやっていること・やりたいことの説明。

両方ともとても心地よかった。

自分が参加したチームのメンバー紹介

  • 二児の母であり、人間力を高める学習体験を子どもに提供するECサイトを構想中の佐藤さん(実名公表を控えられていて、仮名です)。出産の一週間後にもかかわらずキックオフ会に参加する、ものすごいバイタリティ!
  • 自力で学び続ける人のための究極の図書館をつくりたい深山さん(俺です。知り合いの皆さんへ、岡崎は旧姓になりました)。
  • 薄れていく地域教育の復活を、空き家を使って地域でスキルを持つ大人と子どもの接点をつくることで試みる駒崎さん。
  • 自身が高校中退をして感じた実体験を元に、画一的・一本道ではない教育のあり方を質の高い網羅的な学校情報提供を通じて模索する平島さん。
  • カンボジアの農村部に、日本の余ったスマホに英語学習コンテンツを詰め込んで送り届けることで、世界の人々の可能性を広げるEducaを立ち上げた森さん。

どのメンバーも、自分の経験に基づいてやりたいことを考えており、すでに人を巻き込みながら実行している。自分が知っているネットワークを超えて、人と、同志と出会うのは意外と(特に社会人になってからは)難しい。その得難い経験ができた。

ポジティブなコミュニティの成立条件

なんでこんなポジティブな経験ができたんだろう、と考えて見る。

  1. 事前スクリーニング:倍率5倍くらいのスクリーニング 今日参加した方々は、応募時からここまでで五倍の倍率をくぐり抜けてきた方々。身も蓋もない言い方をすると、スクリーニングが事前にされた分参加者の質が担保されていた。

  2. 十分な母数:似たようなトピックをもっている人で小グループがつくれるだけの母数 母数が十分に大きいので、倍率5倍のスクリーニングをしても結果 数十人〜100人くらいのメンバーが集まる。これだけいると、興味分野・パッション単位で小グループを編成できる(それが今日のチーム分け)。パッションが似通っているので、お互いに深く文脈を理解しながらディスカッションができた。

最後に、村口和孝さんのお話と懇親会

キックオフ会 最後の目玉として、日本のVCの草分け的存在 村口和孝さんのお話。

以下は自分が気になった内容のメモ。

  • 「今時の子どもは、テレビをiPadみたいに手でめくろうとする」常に時代は変わる。あなた方の感覚も既に古いかもしれない。
  • キャズムを超える前の起業家の評価は「変わり者」。今でなく二年後の未来にウケるものを考えよう。その勇気を持とう。
  • 事業マインドを持たず「良いものだから」という理由で広めようとする活動は、結局は誰かに迷惑をかける。事業化こそが、世の中が受け入れているサインだから。世の中が受け入れないものを広めようとすると、誰かが犠牲になってしまう。
  • 金がなくて、若くて、知名度がない人に、村口さんは投資したい。彼らは変人って言われることに耐えられるから。
  • PDCAは、組織人の標語。起業家は、OODA(Observe, Orient, Decision making, Action)を代わりにやる。晴れて成功したら、PDCAしてください。

懇親会でも皆が知り合いやすくなるちょっとした仕掛けがあって面白かった。

今後このメンバーで毎週集い、人と事業を成長させていく。とっても楽しみです。 と同時に、起業家という文脈以外でも、エネルギーあふれるあたたかいコミュニティがどんどん生まれてほしい。そのために、このイベント紹介記事が参考になれば幸いです。

日本語で「計算の楽しさ」を伝えるプログラミング言語 Japalispをつくりました。

(経緯) ニューヨークのプログラミングラボに滞在中、ひょんなことから日本語の話し言葉でLispっぽいプログラムが書ける Japalispというプログラミング言語を開発しました。

Japalisp(ジャパリスプ)自体は下記リンクを参照してください。

もっとも自然な日本語プログラミング言語 Japalisp

利用者はお金を払いたくない訳ではない。アプリ収益化のタイミングについての考察

Pomodoroテクニックという言葉を聞いたことはありますか? http://pomodorotechnique.com/

photo by Jack Zalium

Pomodoroテクニックとは、あなたが何かに取り組む時間を細かく区切って、 25分集中しては5分休む、25分集中しては5分休む、というのを繰り返すテクニックです(最近知りました)。

私は現在、自分でタイムマネジメントをしなければいけない環境に身を置いているので(ニューヨークのプログラミングキャンプに参加中 ) 試しにこのテクニックを使って自分の時間を管理しています。まだ始めたばかりなのですが、結構良い感じです。

さて、この記事で書いてみたいのは、このPomodoroテクニックそのものではなく、 PomodoroテクニックをPC環境で実践するためのアプリを探したときに気づいた「アプリの収益化のタイミング」についてです。

今回話題にするのは、数あるPomodoroテクニックアプリの一つ、「Pomodoro Time」というものです。シンプルなインターフェースなこと、何より無料なことに惹かれて使い始めてみたのですが、その収益化の仕方が良いなぁと思ったので気づいたことをここに記します。

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みんな、有料と無料のチョイスが与えられたら、とりあえず無料を試してみますよね。 でも、みんながみんな無料でサービスを使い続けているだけだと、開発者はとっても悲しい。 一つの使いやすい美しいアプリをつくるのは、それがどんなに簡単なものに見えたとしても、とても難しいものです。

開発者にとってお金は全てではないにせよ、収益という形でリターンがもらえれば、そのアプリやサービスの持続可能性は高まります。

それでは、どうやってこの利用者と開発者のお金のズレを一致させられるのでしょうか?

私が考えるのは、「利用者にはお金を払いたいタイミングがある」ということです。 つまり、利用者は必ずしもずっと無料でサービスを使い続けたいわけではなく、もし 「適切なタイミングで、リーズナブルな範囲で」お金を払うというオプションが用意されていたら、お金を払うことに抵抗はない、ということです。

Pomodoro Timeアプリを例にあげます。

まず、Pomodoro Timeアプリに遭遇したときの利用者の心理は、 「自分の時間管理をよりよくできるアプリはないかな」といった感じでしょうか。

この時点では、私は自分が探しているものにお金を払う気持ちは全くありませんでした。 「自分の時間管理をしたい」という欲求は、お金を使っても良いと思えるような大きなものではなく、 「なにか使えるものが転がっていないかな」くらいの気持ちだったからです。

反対に、この時点でもうお金を払う準備ができているような類の探し物もあるでしょう(ビジネス効率化のサービスを探している担当者の場合とか)。

しかし、Pomodoro Timeを使い始めてみて、「あ、これは本当に自分の時間管理を助けてくれているな」と感じるタイミングがやってきました。 この時点で、お金を払う心理的障壁はかなり下がっています。 自分の生活をすでによりよくしてくれているものに対して「少しのお金を払っても良い」というのは、 お金の使い方としてより正当化できるものです。

この時点で、利用者、私の心理は変化しています。 そこで必要なのは、その心理的障壁が下がったことにマッチする追加機能の提供(とそれを伝える通知メッセージ)です。

Pomodoro Timeアプリの場合は、 350円を払うことで Pomodoro Time Proにアップグレードでき、その追加機能は

  1. MaciPhoneアプリのPomodoroの累積回数/タスク管理の同期
  2. 広告の非表示

というものでした。

これは、Pomodoro Timeは自分の時間管理に役に立っている、と感じ始めたユーザー、私にとって、とても納得が行く「お金を払うタイミングの提供」でした。

なぜなら、Pomodoroテクニックがうまくいき始めていると感じ始めた利用者にとって、このテクニックを生活の隅々で使いたい、というのは自然な欲求だからです。 その時点で、1. の追加機能が示されることで、私は「あ、350円だったらお金を支払っても良いな」と説得されました。少額かもしれませんが、この350円の支払いを利用者が納得いく形で伝えるのはとても難しいことです。

まとめます。

  1. 利用者はお金を払いたくない訳ではない。利用者がお金を払っても良いタイミングはどこなのかに目を向けよう。
  2. 利用者が価値を感じ始めた欲求の延長線上に追加機能があるかどうか考えよう。

あなたが次に何かの収益化を考えるときに、この記事が参考になれば幸いです。

謝辞

下書き状態で記事を読んでフィードバックをくれたMasaki Nakadaさん、Yuta Igarashiさん、ありがとうございます!