zakisan's blog

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ベルリンにて転職しました。

お久しぶりです、ドイツベルリンから書いております。 深山雄太です。

前回の記事

kenzan100.hatenadiary.jp

結論から申し上げますと、今月いっぱいで今働いている会社を辞め、来月からベルリンの別の会社で働き始めます。

海外で働きつつ、そのまま現地で転職活動をしたのは生まれて初めてのことです。ベルリンで働き始めてから一度も活動報告をしていなかったこともあり、この記事でまとめて書いてみます。

ベルリンどうよ?

とても良いです。ベルリンの住みやすさは最高です。 東京よりも圧倒的に人口密度が低く(23区と比較して、人口は約三分の一、面積は約1.6倍だったかな)、通勤や週末の買い物にまったくストレスを感じません。

部屋も広い。東京やニューヨーク、ロンドンとかだと、家賃あたりの体積が極端に狭いと感じます。その点ベルリンは、たてよこ高さすべてにおいて「一人が快適に暮らすにはこれくらいのスペース必要っしょ」みたいな最低基準が高い気がします。

f:id:kenzan100:20161201005552j:plain [オフィスです]

ベルリンも不動産価格は高騰しているみたいなのでいつまでもこの状況が続くかはわかりませんが、今の所はエンジニアが楽しく働けそうな都市の中ではゆとり(というか田舎感)を感じることができます。

お店の営業時間が短く、深夜営業ほとんどなし。日曜日は基本的にすべての店が閉まります(レストラン除く)。 日本のコンビニ、ドラッグストア、ドンキホーテみたいなものは皆無でして、物欲がなくなります。買い物がパターン化してくるので、買い出しのストレスが減りました。

大都市に慣れた人からすると、ベルリンは不便かも。でもエンジニアとしては一台のPCと電源とWi-Fiさえあれば、時間はいくらあっても足りないくらいの学習リソース(やコミュニティ)があります。 選択肢が少なくても、打ち込めるものがあればいい。そんなライフスタイルを望む人にとっては、ベルリンはとってもおすすめです。

ちなみに家から職場までは、こんな道のりです。

f:id:kenzan100:20161201010153j:plain [家を出たあたり]

f:id:kenzan100:20161201010543j:plain [地下鉄]

f:id:kenzan100:20161201010315j:plain [そして職場の近く]

なんで転職するの?

ベルリンはそんなわけで自分にとってとても暮らしやすい環境ですが、会社は、働くうちに辛さを感じることが増えてきました。 理由は二つで、あまりにも人数が少なすぎたことドイツ語でのコミュニケーションが思ったより多かったことです。

3月から今月末まで八ヶ月働いたことになるその会社ですが、ウェブアプリ開発を中心にした受託開発の会社です。 https://nerdgeschoss.de/

大学を出たてのドイツ人二人が創業者。長期のお仕事が増えてきたということで、フルタイムのエンジニアをhttp://berlinstartupjobs.com/で募集していたときに、偶然応募しました。 詳しくは前回の記事にまとめてあります。

柔和で人当たりのよいクリスと、技術オタクのイエンズ。この二人の組み合わせは絶妙で、二人が大きめの仕事を取ってくるさまを間近でみるにつけ、つくづくチームって大事だな、と思います。

f:id:kenzan100:20161201010939j:plain [創業者二人の写真。数年前だからだいぶ若い。]

ドイツ人二人で、ドイツ国内のクライアント6社くらいを同時に回していた彼ら。その環境でなぜか東京から連絡した日本人の私を採用してくれました。真相は今でも謎ですが、数回のスカイプと技術課題で遠隔地にいながらオファーを決断してくれた彼らの懐の深さには、今でもいたく感謝しております。

彼らは採用当時「ベルリンは英語だけでやっていけるし、俺たちを英語メインで仕事してるから、ドイツ語いらないよ!」と言ってくれたのですが、しかしやはりここはドイツ。そういうわけにはいかなかったです。

ドイツ語辛い

同僚がいなく、創業者二人とクライアントがドイツ語で打ち合わせをしていたりするので、どうしても会話で後手後手にまわってしまう。

ステークホルダー全員、英語を話そうと思えばそれこそペラペラしゃべることができる人たちなのですが、込み入った話になってくるともちろんドイツ語の方が話しやすいわけで。そういうときに、毎回あとから「で、何が決まったんだい?」と聞き返すのは、ストレスでした。

日本でも英語を社内共通語にしようとする会社がいくつかあると思いますが、たとえば契約の話とか、納期がせまってきたときとか、ホットフィックス対応とか。そういうときにはやはり母語でのコミュニケーションの方がリスクが少ないわけです。

ましてや従業員とクライアントであれば、どちらを優先させたほうがよいかは明らか。クライアントが快適に話せる言葉を使ったほうが良いに決まっています。それを実感した八ヶ月でした。

「ドイツに移住しておいてドイツ語が辛いとか、こいつ何言ってるんだ」というツッコミが聞こえてきそうですが、ベルリンの良いところは、そのときに「英語オンリーの職場に転職する」という選択肢があるところです。

このとき自分には「ドイツでこの先もがんばりたいので、ドイツ語を学んで、今の職場でプレゼンスをあげていく」という選択肢と、「英語が通じる地域でエンジニアとして活躍したいので、英語だけで何とかなる職場に転職する」という二つの選択肢がありました。

自分にとっては明らかに後者の方が比重が大きかった。そのため、このタイミングでの転職活動に踏み切りました。

転職活動やってみてどうだった?

冒頭にも書きましたが、海外での就労生活ははじめてで、特にツテがあるわけでもありません。その状態で最初は自分が好きな会社(ドイツにはこだわらず)にぽろぽろとレジュメを送っていたのですが、あまり反応がよくありません。

今度は地域をベルリンに絞って探してみますと、募集自体はいくらでもあるものの、何を基準にしてどういう順番で応募しようか、迷ってしまいました。

ハニーポットというサービスがよかった

そんなときに同じく日本からベルリンに移住されたエンジニアの先輩から、ハニーポットなるサービスがあることを聞きました。

f:id:kenzan100:20161201045130p:plain ["Companies apply to you."]

ハニーポットはいまおそらく流行りのエンジニア限定のリクルーティングサービス。各地に似たようがものができつつあると思いますが、この会社はドイツベルリンにHQがあり、ヨーロッパで転職活動をしているエンジニアに嬉しいサービスです。

エンジニアとしてサービスに登録するだけで、複数の企業があなたにコンタクトしてくれます(オファー金額つき)。レジュメの公開期間が二週間限定と決まっており、その間に登録企業があなたに興味をもてば、連絡がきます。限られた時間の中で、あなたがどれだけ求められるか、だいたいの市場価値を判断することができます。

アメリカだと似たようなもので https://hired.com/ というのがあります(サービス開始時期としては、こっちが先だったと思う)。

インタビュープロセスにも不慣れな時期においては、こういったところで複数のインタビュープロセスをこなしてみることで、「採用までにだいたい何ステップあって、各ステップでどんなことを聞かれて、自分はどれだけペラペラしゃべることができるか」というものを確認できます。

やっているうちにだんだんと傾向と対策がわかってきます。その後の活動に向けて、大いに自信がつきました。

自分は三ヶ月くらいの期間で、合計10社くらいとお話をし(レジュメ送っただけで終わったところは除く)、うち5社くらいからオファーをいただいたのですが、そのうちの半分はこのサービス経由でした。

採用の大まかなプロセス

だいたいどの企業も、

  • 書類でのスクリーニング
  • スカイプとかで1、2回自己紹介と技術についてのオープンエンドセッション
  • 技術課題(ホワイトボードか、持ち帰り課題、ときどき1日体験入社みたいなのもあった)
  • 最終的な相性をみるお見合いセッション
  • オファー

という流れをとっていたように思えます。

特に自分が面白いなと思ったプロセスをとりあげると、

最初の方で必ず聞かれる質問

"What is the biggest technical challenge you solved recently?" という感じの質問は、必ずと言っていいほど聞かれます。 https://www.quora.com/How-do-you-answer-the-technical-interview-question-What-is-your-biggest-challenge-and-how-did-you-solve-it

答えはその人自身の経験に依存しますので対策はないのですが、 「ある程度実践的な(チュートリアルやりましたとかではないやつ)技術課題に対して、情熱的にしゃべることができること」 というのが、この段階で大切なことだと感じています。

ただでさえ母語ではない英語で語らなければいけないですので、必ずサマリーを書き出したり、暗唱してから臨むことをおすすめします。 「あぁ、こいつは技術が好きで、自発的に問題に取り組んで成果を出せるんだな」と思ってもらえたら、このセッションはパスできると思います。

技術課題の傾向

局所的な感覚値ですが、グーグルとかマイクロソフトが採用しているコーディングチャレンジに対して、肯定的な企業と否定的な企業が両方いると思います。 https://www.quora.com/Which-is-the-best-book-to-prepare-for-coding-programming-interviews

いわく「コーディングパズルでは、その人が職場でどうパフォーマンス発揮するか全く測れない」 一方で「アルゴリズムやデータ構造について理解が乏しい人は、肝心なところで活躍できない」などなど。

ハイブリッド型の技術課題として、「一問一答形式のコーディング問題を足切りで出題、その後合格者にだけ数時間から数日かけて取り組む技術課題を出す」などもありました。

最近増えてきたなと思うのは、その会社のプロダクトの一部を簡素化して、お持ち帰り課題として切り出す、というパターン。 その中でも、SoundCloudの課題はとっても面白かった(落ちました)。技術課題が面白い会社は、良い会社だと勝手に思っています。

深掘りできるときにしておこう

会社が違えばその会社の技術に対する姿勢もそこそこ異なるわけで、一概にこれをやったらいい、というものはやっぱりありません。 でも、あなたが応募している職種に書かれている技術スタックで、それがどういう仕組みで動いているのか(インターナルの概論)というのは、このセッションをクリアするのに大事な所だと思います。

例えばRails。ウェブアプリ開発時に、Railsの恩恵が大きい部分(Railsが何を解決しているのか)についての理解がどの程度あるか。自分が楽できたなー、と感じた時などに深堀りしておくことが大事だと思います。ARがどうDBとやり取りするのかとか、AutoLoadingとか。

転職活動というのは「もしかしたら聞かれるかもしれないから勉強しておこう」という点において、普段よりも学習意欲が高まっている状態だと思います。転職活動をちょっと大きめにとらえて「自分のスキルアップ期間」と考えて勉強すると、なかなか有意義な時間が過ごせるのではないかと。

https://medium.com/@kenzan100/fastest-crash-course-on-algorithms-and-data-structures-a0679dd5fc24#.li3vbbrfg

お見合いセッション〜実際に決断するまで

はれて技術課題も突破したら、あとはもうお見合いみたいなもんだと思います。 どんな企業にも良い顔をしたくなるのですが、待遇面と「毎日の業務フローで、今までの経験上、ここだけは譲れない」みたいなものを明確にしておきましょう。

これは日本にいたときのエンジニアの先輩のアドバイスの実践なのですが、 もしここまでに彼らのオフィスで1日とか半日時間を過ごしたことがないのであれば、頼み込んででも「1日だけ体験入社的なことさせてくれない?」と聞いてみましょう。 お互い入社してからミスマッチが判明するのは最悪ですので。

自分の場合は「英語だけで通用する職場に行きたい」というのがそもそもの転職理由でしたので、開発チームの日常の業務フローが英語だけで完結するか、というのは大きなポイントでした。

結果的には、カスタマーサポート以外全員外国人のチーム、顧客のほとんどが北米、だけどヘッドクォーターはベルリンという会社に巡り合うことができ、当初の目的を叶えることができそうです。

f:id:kenzan100:20161201043344j:plain [ここで働きます]

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転職活動で一番つらかったこと

いつの時代もつらいのは、最終的には一社に決めなければいけないのに、複数社並行してプロセスを進めなければいけないことですね。こればっかりは。。 体験入社で心が固まることは多いとは思います。

あと、すぐに決めるぞ!という気持ちで臨まずに、転職活動を課外活動みたいなものとしてとらえて「夢の仕事(ここからオファーもらえたら、百パーオーケー)に出会うまで長期的に頑張り続ける」という気持ちの方が成長できる気はします。メンタルも技術力も。

ただ、今いる会社の通常業務をこなしながらなので、心と体は疲弊していきます。ほどほどにしましょう(奥様、話を聞いてくれてありがとう)。

そういう意味では、選考が進んだ会社の中でSoundCloudとかN26(銀行スタートアップ)が自分にとっての「夢の仕事」でした。ただ、こういうところはおそらく応募件数が他のスタートアップとくらべて桁違いだと思います(いわんやグーグル、フェイスブックAmazon、エトセトラ)。

f:id:kenzan100:20161201044311p:plain [SoundCloud楽しかった。色々と噂はありますが。]

こういった所のプロセスは、よりアーリーなスタートアップ企業よりも時間がかかるということは覚えておくと良いと思います。私の場合、あるスタートアップが二週間で計5回くらいのプロセスを終えてオファーをくれたのに、今あげたような大手は二週間たってまだ技術課題の結果待ち、というのはざらでした。

この場合、既にオファーが出たところに待っていただいている状態で、(そもそも落ちているかもしれない)結果待ちをしなければいけないのはかなり辛いです。「そういった特殊な状況下になったら、どういう決め手でオファーをアクセプトするか」は事前に考えておくとよいかも。

がんばってね!

はい、がんばります。 えーと、この八ヶ月で自分に仕事環境に起こった変化でいうと、だいたいこんなところです。

そんなこんなで、自分は1日の体験入社も済ませ、来月から新しい会社で働きます。体験入社時点ですでにかなりディープなプロジェクトが待っていることもわかったので、不安と期待で胸がいっぱいです。

良いご報告ができるよう、がんばります。 それでは、また。